皆さまからの、変わらずのご理解とご支援により、今年一年、創作活動を続けられました。
そのありがたさを噛みしめる年末です。
来年も、皆さまに貢献出来るよう、精進する所存です。
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・・・今年、一年を振り返りますと、やはり激動の時代と感じます。
コロナ前の消費税増税や、その他色々な出来事による景気の冷え込み、その後の長く続くコロナ禍・・・更に、方々で発生する戦争の影、既存メディアに対する人々の捉え方の変化、目まぐるしく変わるSNSの流行や情報・・・今、色々な火種が社会に埋もれている感があります。
それらの事により、社会は、ある部分は壊滅的に悪くなり、またある部分は逆に「急速に良い方向に進んだ」事もあると感じます。
当工房の創作に関する事も、目まぐるしく変化して行きます。そんな社会の激動の内から「良い方向」に向かうための何かを俊敏に、かつ慎重に見極め、成長させられればと思っております。
和装染色品の制作・卸・販売をメインに生業にしている当工房が、生業に関し、特に先年〜今年から感じるコロナ禍による大きな変化は「お客さまが急速に進化した事」です。特に「良いもの・悪いものの見極め」「価格が適正かどうか?」「販売する人は誠実か?」「販売する人が取り扱い商品に対して愛情と尊敬と知識を持っているか?」という点について、厳しくなった感があります。
コロナ禍によって、激烈に売上を落とした和装業界は、人の動きの制限がある程度解かれると、催事とセールを大変な回数繰り返しました。それは今も続いております。それによって、お客さまは大量の商品と対面し、セール価格により今までは購入出来なかった品を手にすることが出来ました。そして、セールが繰り返されると「セール価格が通常の価格化する」事になります・・・お客さまは「大量の具体的情報に触れた」のです。そこで「自分が本当に欲しいと思うものを、愛情を持って取り扱う人から、適正価格で買いたい」と考える人が増えた気がします。
それと共に、SNSなどによる素早い情報の収集と「お客さま同士での情報の具体的共有」が即座に行われる事により、ここ二年程で、一気にお客さまの「見る目」が進化したと当工房では考えております。
それは、提供する側からすれば辛い事かも知れませんが「もう時代が元に戻る事は無い」と感じます。
世の中が動き出し、お客さまが過去と同じように訪れて下さっても「もうお客さまは、今までのお客さまとは違う」のではないかと思うのです。実際に、お客さまとお話すると、確かに違います。
ですから、より一層高度になられたお客さまへ対応出来るように、こちらも成長しなければなりません。
また、最近は、いろいろな分野で企業の「持続可能性を考えた行動」と「業界の内部でも外部でもフェアである事」が重視されています。企業が利益を上げる事は大切ですが、その内容に「適正さと誠実さ」が求められており、それを社会と顧客が監視している時代です。制作・販売問わず、伝統工芸系でもそれを求められるようになるのではないかと思います。
後継者育成についても、当工房は色々と手を尽くしておりますが、現代では和装制作系の仕事は「手に職つけても全く食えない状態」です。ですので、当工房は弟子に会社員のような待遇を与える事は出来ません。そういう時代に、それでもやってみたいとやって来る若い人たちに当工房は何が出来るか・・・という事を常に考えております。(*当工房独自のサポートシステムはあり、工房所属作家の甲斐凡子は修行中はもちろん、独立してからも、一度もアルバイトに出た事はありません)
・・・そんな事を考える年末です。
改めまして、本年もお世話になりました。皆さまのご理解・ご支援に厚く御礼申し上げます。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
(写真は、現在の仕事場のベランダから見える富士山です)
フォリア 代表・仁平幸春 所属作家・甲斐凡子